雨の日にはたまに

のどかにつづる

デンマーク地方選挙2021年の風景

デンマークでは地方選挙が11/16の火曜にあるため、街は静かに盛り上がっている。いたるところに候補者のポスターが貼られ、ビラを配る人たちがあちこちにいる。家のポストにもチラシが届く。小さな贈り物も問題ないようで、コーヒーを振る舞っている政党があったり、候補者の写真が貼られたハリボーがチラシについていたり、ジュースのパックを手渡していたり、折りたたんだコーヒードリップペーパーをくっつけている候補者もいた。機械的にビラを渡して終わりとか、一方的に政策をがなりたてて終わりとかではなく、対話をしようとしてきてくれるところはさすがデンマークだなと思う。残念ながらデンマーク語がわからないので、話しかけられてもあんまり応えられなかったけれど。たぶんその延長で、拡声器を使ったりしている人もいなかった。あくまで、対面で、一対一で、人間どうしがコミュニケーションをとる。

候補者のポスターも思い思いに工夫を凝らしていて面白い。みんなキメ顔で名前と政党名があって、というところは日本のものと似ているけれど、スーツを着ている人はごくわずかで、自分のバックグラウンドや政策に関連した内容を表しているようだった。(工具やドライバーを腰に下げた作業着姿の人、眼帯をした人、自分の描いた絵もポスターにしている人など)。そして、全体的に年齢が若く、男女の割合も半々くらいだった。日本の選挙ポスターでよく見る「おじいさん」といった感じの人はほとんど見なかった。たとえばこのページに、ユニークな選挙ポスターがいろいろ取り上げられている

 

大学のイントラネットにも、外国人向けの選挙案内が英語で掲示されていた。自分には選挙権があるのかどうかの確認、どうやって投票するかや、さらなる必要情報がどこで確認できるかなど。そう、デンマークの地方選挙では、外国籍の人でも、EU国籍があったり国内に4年以上居住したりなど、一定の条件を満たせば投票ができる。(国政選挙のほうには投票権がないらしい)

ところで、各政党の特徴を調べてみると、ビラやポスターに対して抱いていた印象が裏付けられるのもおもしろい。地球温暖化を取り上げている政党は環境保護の政党だったり、いかにも選挙ポスター!というところは左派・右派を問わず伝統的で大きな政党だったり、強面のおじさんのポスターは極右政党だったり。

 

選挙の当日、この日はもうお祭りのような雰囲気もあった。別のキャンパスに行こうと道を歩いていると、選挙ポスターをボードにしたものを掲げ持った人たちが何人も集まって、スピーカーから流れるノリのいい音楽に合わせて踊っている。車道や自転車道に向けて長い横断幕をみんなで持っている人たちもいる。今日は火曜で平日だけれど、暇をもてあましたお年寄りたちの活動といった雰囲気はまったくなくて、性別問わず若い人の割合が大きい(30代以前が半分くらい?)ように見えた。

選挙が終わっても、街のあちこちに貼られたポスターは撤去されるきざしが見えず、選挙の余韻をまだ残している。デンマーク投票率は非常に高いけれど (COVID-19の影響のため過去100年間で3番目に低い投票率だったが、約67%あったそう)、この国では選挙がみんなの活動であり、人々がみんなで作り上げているものなのだということが、すこしわかったように思う。

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大学前に貼られた選挙ポスターたち(道路向かいの柵にもたくさん貼られているのに注目)

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横断幕を持つ人たち