雨の日にはたまに

のどかにつづる

プラハ

念願かなってチェコに来ることができた。いろいろとおすすめの場所を教えていただいており、プログラムの合間の短い時間にも迷わずいろいろな場所に行くことができた。自分の足と経験で良いところを探していくのも旅の醍醐味ではあるし、おすすめをほかの人に聞いてそのとおりに行動するのはただ乗りのようで悪い気持ちになってしまうけれど、時間が限られていて子連れで行動範囲が狭まっていると非常にありがたいものでした。


いくつか印象に残っている場所

街の様子

古い時代から存在する建物が、そのときどきの人間の営みを次々にインストールしていった痕が、そこかしこに重層的に残っているような雰囲気。迷路のような路地を抜けると開けた先に高い尖塔がそびえているのが見えたり、扉を開けて建物の中に入るとゴチック様式の見事な装飾が広がっていたり。研究室の同僚が「プラハはヨーロッパでいちばん美しい街だと思う」と言っていた理由がよくわかるような気がした。
特に記憶に残っているのは、Muzeumから駅から近くのレストランに行ったときのこと。Googleマップが建物の中の道を示し、どこかシュールでかわいい装飾のアーケードを抜けていくと、少し開けたところで逆さの馬がぶらさがっていた。その先には映画館。一瞬、自分がつげ義春かなにかの漫画の中にいるような気がした。

 

Kostel svatého Jakuba Většího(聖ヤコブ教会)

日曜の朝に訪れると、教えていただいた情報のとおり、オルガンのコンサートが開催されていた。低い音が響いてくる扉を開けて中に入ると、バロック様式の装飾が高い天井まで続いていた。見事な装飾を静かに見て回り、椅子に腰掛けてオルガンの音に耳をすませていると、厳かな気持ちになってくる。涙を流している人もいた。

 

České muzeum hudby(チェコ音楽博物館)

吹き抜けの建物が楽器の内部を見ているようで美しかった。常設展は楽器を演奏したりできて、子供も大人も楽しんでおり。そして特におもしろかったのは特別展。「動物」をテーマにした楽器や音楽をさまざまな角度から展示していて、動物素材の楽器、動物を模した楽器、楽器のなかで動物の名前で呼ばれている部位、動物が出てくる音楽、などなど。楽器が置いてあって演奏できたり、ヘッドフォンがかかっていて音楽を聞けたり、白鳥の湖の衣装を着て(録画された)ダンサーのインストラクションを受けられたり。昔ながらといった感じの職員さんや警備員さんもすてき。

 

Petřín(ペトシーンの丘)

時間がなくて通り抜けただけだけれど、とても気持ちの良いところだった。傾斜のついた丘に芝生や森が広がっていて、お弁当やコーヒーを持ってピクニックに出かけたくなるような。ケーブルカーが走っているのも楽しい。庭園や民族学博物館もあったようなので、また来ることがあったらもっと探索しなければ。

 

Vyšehrad

川沿いのトラムの最寄り駅で降りて坂を登っていくと、Vyšehradのお城の森の中に入っていった。細い小道が好きなのだけれど、民家があったりしたのがだんだんと古いお城の雰囲気に変わっていくのが特にすてきだった。夏の木漏れ日が気持ちよかった。

 

Národní Muzeum(国立博物館

博物館好きとしては外せないところ。建物自体がすてきで、展示も遊び心があって楽しい。考古学の展示がほとんどない…と思っていたら、改装中だったそう。キューポラの内部まで登って、建物上部の彫刻を間近で見つつ、街を見下ろすのが楽しい。博物館の建物の歴史を短く示したアニメがかわいかった。新館に移動する地下通路で流れている映像もずっと見ていたかった。


すてきなお店

Winebar 0,75 [Sedmička]

お店の雰囲気もワインもおつまみも最高だった。店員さんが丁寧にワインや食材の説明をしてくれて、ふんふんと聞いていた。家の近くにあったら通ってしまいそう。

 

Champagneria

夕食の予定が始まるまでの数十分で行ってみた。涼しいお店の外に多くのお客さんが座っていて、店内は落ち着いた雰囲気。シャンパンもおつまみもおいしくて、むしろここで夕食にしてしまいたかったな。

 

Kantýna

食堂のような開放感のある雰囲気に、とにかくおいしい肉料理! サラダやスープも大満足。2回訪れてしまった。心残りは、かわいい柄のオリジナルエコバッグを購入し損ねたこと。

 

食べ物いろいろ

ハムやおそうざいがとにかくおいしい。スーパーで購入したものでも本当に旨味があるし、パン屋さんに売っていたなんでもないパンにハムとチーズをはさんだようなサンドイッチにすら感動してしまった。ゼリー風の寄せハム(tlačenka)にはちょっと苦手感を持っていたのだけれど、同じくスーパーで購入したものを食べたら、これまでに食べた寄せハムのなかで一番おいしくてびっくりしてしまった。

レストランで食べたカリフラワーのフライ(smažený kvěvták)は、カリカリしつつ内部はもちっとしていて、シンプルだけれどとてもおいしかった。Lはこればかりぱくぱく食べていた。おすすめしていただいた理由が食べてすぐにわかった。花の部分になにか詰め物がしてあるような気もした。

はちみつケーキ(medovník)は、ホロホロとした生地とはちみつが層状に重ねられており、風味があって甘すぎず、いくらでも食べられてしまう。気持ちの良い外カフェに座ってお茶やコーヒーと一緒にいただきたい。

ジャガイモの千切りフライ(bramborák)はKantýnaのカウンターに並んでいたものをRが注文した(私もおいしそうだと思っていた)。ニンニクがたっぷりきいていて、サクサクもちもちして、お酒のおつまみにぴったり。たっぷり脂を吸っていて、けっこうボリュームがあった。

細長いパンのロフリーク(rohlík)は、スーパーで山積みにされていて、みんな何本も袋に放り込んで買っていく。シンプルなパンだけに小麦のかおりが香ばしくて、日常的に食べたくなってしまう。

 

全体的に

観光に来たわけではなかったので、それほどたくさんの場所に行くことはできなかった。けれど、重層的に入り組んだ街の雰囲気をとてもすてきに思った。グラフィックなデザインには、多くの場合、シンプルでかわいくてどこか乾いたユーモアがあるように思い、けっこういろんなものに惹かれてしまった。Libuše Niklováのラバーのおもちゃなんか大好きだと思ったし、モグラクルテクのグッズが所狭しと並んだPohádkaの店内には目を輝かせてしまった。食事は多様でおいしくて、デンマークでもこんなものが食べられたらなと思う。
改めて、すてきなおすすめを紹介してくださったSさんとMさんに感謝申し上げます。